⾦⾕ホテルの歴史

明治維新から間もない1873年(明治6年)日光の四軒町(現在の本町)に「金谷カテッジイン」を開業した金谷善一郎は20年後の1893年(明治26年)、現在地に本格的な西洋式ホテル「金谷ホテル」を設立しました。1923年(大正12年)善一郎が72歳でこの世を去った後は株式会社化され、長男真一が代表取締役として精力的に経営しましたが、太平洋戦争中は外国人客はなくなり、多くの従業員が召集されたためにホテルの運営が困難になったこともありました。
1945年(昭和20年)の終戦と同時に始まった米軍による接収は1952年(昭和27年)まで続きました。昭和から平成へと時代は移り、新しい価値観が生まれる中、「金谷ホテル」は善一郎の「創業の精神」を受け継ぎ、「日本最古のリゾートホテル」としての伝統を守りながら今日に至っています。

文明開化の時代から現代まで - 金谷ホテル140余年の歴史


真一(長男) 金谷善一郎 正造(次男)
明治32年(1899年)

  • 金谷カテッジイン(1888年頃)

  • 明治後期

  • 大正5年(1916年)

  • 現在の金谷ホテル

金谷カテッジイン/金谷ホテルの開業を支えた人々

明治の初期、外国人専用の宿泊施設を作ることは並大抵のことではありませんでした。当時の日本人には外国人に対する深い偏見があり、外国語や異国文化を簡単に受け入れられる環境ではなかったはずです。そのような中、進取の気性に富む善一郎にホテルの開業を勧めたのがヘボン博士でした。英語も話さず、海外にも行ったことのない善一郎が「金谷カテッジイン」を開業し、軌道に乗せることができた背景には善一郎を力強く支えた人々がいました。

ヘボン博士は自分の友人、知人に「金谷カテッジイン」を推薦、博士の薦めで訪れたイザベラ・バードは著書「日本奥地紀行」の中で善一郎や金谷カテッジインについて好意的な感想を述べ、世界的に発信しました。家族のサポートも重要でした。特に善一郎の姉、申橋(金谷)せんは弟の仕事を影でしっかりと支えました。彼女の温和な性格と美しい立ち居振る舞いは多くの宿泊客に好感をもたれました。
また、ホテル開業には多額の資金が必要でしたが、日光の資産家である小林年保が善一郎に多大な融資をして「金谷ホテル」の開業を可能にしました。言葉や西洋文化の理解を助けたのは、アメリカでホテル業を学び帰国後に金谷カテッジインの通訳兼支配人となった坂巻正太郎でした。

ヘボン博士 1815 – 1911

ヘボン博士は、医療伝道宣教師として来日。 ヘボン式ローマ字の創始者。明治学院大学の創始者。1880年(明13)頃、旧約聖書の和訳を完成。日本の近代医療、大学教育、キリスト教布教に大きな役割を果たす。1870年(明3)日光訪問時に金谷家に宿泊。善一郎が金谷ホテルを開業するきっかけを作った人物。

イザベラ・バード 1831 – 1904

1878年(明11)江戸から北海道までの旅の途中、日光を訪問。金谷カテッジインに12日間滞在。その様子は著書「日本奥地紀行」に書かれている。以後2回にわたり日光を訪れ、金谷ホテルに宿泊している。

申橋(金谷)せん 1848 – 1924

金谷家の三女。善一郎の姉。日光の名家、申橋家に嫁いだが、夫の転勤でしばしば別居を余儀なくされ、金谷カテッジイン創業時は善一郎宅に同居。金谷ホテルの黎明期における影の立役者。せんの立ち居振る舞いはイザベラ・バードにより絶賛されている。

小林年保 1848 – 1895

小林家は1700年代より歴代日光奉行所の同心を勤めた幕臣の家柄。戊辰戦争後、徳川慶喜に従って日光から静岡県駿河に移住。1879年(明12)第三十五国立銀行(現静岡銀行)の頭取となる。1889年(明22)日光に小林銀行を開業。多大な融資で金谷善一郎のホテル開業を支援した。息子文雄は申橋せんの三女保子と結婚。

坂巻正太郎 1863 – 1919

大田原の札差の家に生まれる。1885年(明18)22歳の時に渡米。サンフランシスコにてホテル業を学ぶ。帰国後は金谷カテッジインにて通訳兼支配人を勤めるとともに善一郎の息子たちの英語教育にも尽力した。1894年(明27)中禅寺湖畔にレーキサイドホテルを開業。申橋せんの長女包子と結婚。

来館した主な著名外国人

明治維新により長年閉ざされた国であった日本にも多くの外国人が訪れるようになり、1874年の外国人旅行免状交付開始を境に日光を訪問する外国人も急増しました。金谷ホテルのゲストブックには数多くの歴史的人物の署名が残されています。


1895年(明28)のゲストブック(下から3番目 Mrs. Bishop はイザベラ・バード)

1922年(大11)のゲストブック(下から3番目 アルバート・アインシュタイン)
1870年

ジェームス・ヘボン
アメリカ 宣教医
1874年

ハリー・パークス
イギリス 駐日公使
1878年

イザベラ・バード
イギリス 旅行家
1879年

ユリシス・グラント
第18代アメリカ大統領
1882年

サミュエル・ガーディナー
イギリス 歴史家
1888年

ウォルター・ウェストン
イギリス 宣教師登山家
1904年

バジル・チャンバレン
イギリス 日本学者
1904年

エルウィン・ベルツ
ドイツ 医学者
1905年

フランク・ライト
アメリカ 建築家
1906年

アーサー(コノート公)
イギリス王室
西暦 和暦 世界/日本の出来事 日光関連の出来事 金谷家/ホテル関連の出来事 来晃/来館した主な著名人
1851 嘉永4 ロンドン博覧会(イギリス)
1852 嘉永5 井伊直弼が日光参拝 金谷善一郎誕生
1853 嘉永6 ペリー来航
1854 安政1 日本開国 日米和親条約
1859 安政6 安政の大獄
1860 万延1 桜田門外の変 日光学問所(修道館)創立
1861 文久1 南北戦争勃発(アメリカ)
1862 文久2 寺田屋事件 生麦事件
1863 文久3 下関事件 公武合体
奴隷解放 南北戦争終結(アメリカ)
1864 元治1 蛤御門の変 第一次長州征伐 幕府兵日光に駐屯
1865 慶応1 イギリス駐日公使パークスが着任
1867 慶応3 王政復古の大号令
1868 明治1 鳥羽伏見の戦い 五カ条のご誓文発布
江戸城開城 明治維新
1869 明治2 日光県設置 神仏分離令
1870 明治3 ヘボン博士来晃、金谷家に滞在、善一郎に外国人用宿泊施設の開業をアドバイス ジェームス・ヘボン(宣教医、明治学院創始者) (米)
1871 明治4 廃藩置県 日光県廃止 栃木県の管下になる
1872 明治5 アーネスト・サトウ英公使館員が来晃、横浜の英字新聞で日光を紹介
1873 明治6 善一郎(21歳)金谷カテッジイン開業
1874 明治7 外国人旅行免状 交付開始 一般の外国人に日本国内旅行の道が開ける ハリー・パークス 駐日公使 (英)
1876 明治9 エミール・ギメ (実業家)(仏)
フレックス・レガミイ (画家)(仏)
1877 明治10 西南戦争 エドワード・モース(人類学者)(米)
1878 明治11 イザベラ・バード来晃、金谷カテッジインに12日間滞在 イザベラ・バード(旅行家)(英)
1879 明治12 金谷真一(善一郎長男)誕生 ユリシス・グラント (第18代大統領)(米)
1880 明治13 イザベラ・バード 「日本奥地紀行」 刊行 アーサー・クロウ (作家)(英)
1881 明治14 エドモンド・コトー (旅行家)(仏)
1882 明治15 サミュエル・ガーディナー (歴史家)(英)
1885 明治18 伊藤博文が初代内閣総理大臣に就任 トーマス・グラバー (貿易商)(スコットランド)
1887 明治20 小林年保日光に「小林銀行」設立 金谷カテッジイン増築 ウィリアム・カークウッド (法律家)(英)
中禅寺湖畔に初の外国人別荘建設 アーネスト・フェノロサ (東洋美術史家)(米)
ウィリアム・ビゲロー(日本美術研究者)(米)
1888 明治21 ウォルター・ウェストン (宣教師登山家)(英)
1889 明治22 大日本帝国憲法発布 善一郎東照宮雅楽師を辞する アルフレッド・イースト (水彩画家)(英)
1891 明治24 日本鉄道日光線(上野ー日光)開通 金谷ハナ(善一郎妻)死去
1893 明治26 善一郎(41歳)現在地に金谷ホテルを開業
1894 明治27 坂巻正太郎中禅寺湖畔にレーキサイドホテルを開業
1902 明治35 日英同盟
1904 明治37 バジル・チャンバレン(東京帝国大学教授)(英)
エルウィン・ベルツ(医学者)(独)
1905 明治38 フランク・ライト(建築家)(米)
1906 明治39 アーサー(コノート公)(英)
1908 明治41 自家用水力発電所を設置
1912 明治45 明治天皇崩御
1914 大正3 第一次世界大戦勃発 ボイラー設置、客室給湯を開始
1917 大正6 ロシア革命 善一郎隠居 真一が家督相続
1921 大正11 プリンス・オブ・ウェールズ (英)
アルバート・アインシュタイン(ノーベル物理学賞)(米)
1923 大正12 関東大震災 善一郎死去(72歳)
1925 大正14 ハンス・ハンター 「東京アングリング・アンド・カンツリークラブ」設立
1926 大正15 大正天皇崩御 スウェーデン皇太子夫妻
プリンス・ジョージ (英)
1928 昭和3 金谷ホテル株式会社設立 ヘンリー(グロスター公)(英)
1929 昭和4 世界恐慌 東武鉄道日光線開通 ヴェルナー・ハイゼンベルグ(ノーベル物理学賞) (独)
ポール・ディラック (ノーベル物理学賞)(独)
1931 昭和6 満州事変 チャールス・リンドバーグ (飛行家)(米)
1932 昭和7 チャールス・チャプリン (映画俳優)(米)
1934 昭和9 日光国立公園に指定
1937 昭和12 ヘレン・ケラー(社会福祉活動家)(米)
1939 昭和14 第二次世界大戦勃発
1940 昭和15 中禅寺金谷ホテル開業
1945 昭和20 終戦 GHQ金谷ホテルを休養施設として接収
1946 昭和21 ドワイト・アイゼンハワー(第34代米国大統領)
1947 昭和22 日本国憲法発布
1951 昭和26 サンフランシスコ講和条約 東照宮本殿、陽明門などが国宝指定
1952 昭和27 接収解除 一般営業開始
1953 昭和28 NHKテレビ本格放送開始 金谷ホテル創立80周年
1957 昭和32 昭和天皇皇后両陛下
インディラ・ガンジー (インド首相)
1963 昭和38 ケネディ大統領暗殺 金谷ホテル創立90周年
1964 昭和39 東京オリンピック 新幹線開通
1965 昭和40 ミハイル・ショーロホフ(ノーベル賞作家) (露)
1967 昭和42 皇太子殿下・美智子妃殿下
1972 昭和47 札幌冬季オリンピック
1973 昭和48 中東戦争 第一次オイルショック 金谷ホテル創立100周年
1983 昭和58 金谷ホテル創立110周年 アン王女、マーク・フィリップス夫妻 (英)
1989 昭和64 昭和天皇崩御
1993 平成5 皇太子ご成婚 金谷ホテル創立120周年
1995 平成7 阪神大震災
1998 平成10 長野冬季オリンピック
1999 平成11 「日光の社寺」世界遺産登録
2003 平成15 イラク戦争 金谷ホテル創立130周年
2011 平成23 東日本大震災
2013 平成25 金谷ホテル創立140周年
2014 平成26 「金谷侍屋敷」及び「土蔵」が国の登録文化財に指定される
2015 平成27 「金谷ホテル歴史館」オープン
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